【コーチング】ウェインショーター

(2014年4月にウェインショーターのライブを見た感想をfacebookに書いたものが、今見ても結構よく書けているので)

うまれて初めてWSQを生で見てきてしまいました。

WSQとは、そう、Wayne Shorter Quartet
メンバーはWayne Shorter,Danilo Perez,John Patitucci,Brian Blade

正直まだ頭の中が湧き上がってしまってて、全然まとまらないのですが、思うままに書いてみようと思います。
少し長くなってしまったらごめんなさい。

英語の綴りが大変なので、名前をカタカナで書くことをお許しください(笑)

ウェインショーターはジャズのミュージシャン。サックスの人です。
ウェインショーターを知らない人でもマイルスデイビスの名前を知っている人は多いのではないでしょうか。
言わずと知れたジャズの帝王マイルスデイビスの1960年代を作曲など様々な面で支えまくっていたのがウェインショーターです。
僕は影の主役なのではと思っています。

そのウェインショーターは今80歳。
現役バリバリのミュージシャンです。
その音楽は、円熟味を増すどころかますます尖っていっているという素晴らしさ。
僕は今日、音楽の一つの完璧な形を見たように思います。

場所は渋谷のオーチャードホール。
場内が暗転し、咳払いなどが聞こえる中、まだかまだかと期待に胸を膨らませる聴衆たち。
実際には5分くらいだったかもしれないけど、もっととても長く感じられた暗転がすぎ、ステージ左側から現れる4人。
特にはしゃぐでもなく、落ち着き払うでもなく、まるで日常を過ごすかのようにステージ中央の楽器に近づいていく。
左から、ピアノ、二本のサックス、ウッドベース、ドラム。

演奏は突然始まり、おそらく30分くらいの間ノンストップ。
おそらく1曲の演奏。
おそらく、というのは、
どこまでがテーマでどこからがソロパートで、どこが曲で、どれがインタールードで、どれがインプロビゼーションで、何がアドリブで、というのが全然わからない状態で突き進んでいく演奏だからだ。
ビルエバンスがもし生きていてら「こんな素晴らしいインタープレイをしたかったんだ」ときっと声をあげるだろう。

とにかくとてつもない緊張感で演奏が突き進んでいく。
ウェインショーターカルテットであり、ダニーロペレスカルテットであり、ジョンパティトゥッチカルテットであり、ブライアンブレイドカルテットでもある。
そして4人が一つの塊となって一つの生き物となって、森羅万象を描いていく、そんな演奏だった。

まだ言葉もきちんと喋れないような子供を何人か集めると、今までになかった遊びをオリジナルのルールで開発して遊び始めることがあるというが、まさにそんな風な演奏。
いったいどのように打ち合わせたのか、それとも打ち合わせなんかなかったのか。
時に形のはっきりしないミニマルミュージックのようにもなり、天使の歌声のようなサックスが聴こえたかと思えば突如火を噴くような演奏になったり。
森の中に迷い込んだような錯覚すら覚えた。みんな同じような木に見えるけど、全部違う木。どこにいるかわからない。突如光が降り注いで、天国に歓迎されたかと思えばイカズチを落とされたり。
まさに予測不能。
全く予測不能。
もはやジャズかどうかなんてどうでもいい。4ビートなんてついぞあらわれなかったし。
アコースティックショーターミュージック。これだった。

長い長い、おそらく一曲目が終わり、拍手喝采がやんだ後、始まった曲はorbits。
これも、今までに聴いたどのorbitsとも違う。
CDで聴いたことのある曲だからこそわかった。
WSQはすごい勢いで進化を遂げている。鳥肌がたった。

そして、僕は一つのものすごい体験をする。

「死にたくない」
そう真剣に思ったのだ。

気でも触れたかと思われるかもしれないが構わない。
僕はそう思ったのだ。

あまりの変幻自在な演奏の中、僕は「これはもう二度と聴けない」そう思った。
そして、こう思った。「僕は、二度は生きられない」
その瞬間、死ぬことがものすごく恐ろしくなり、そしてそれと同時に、生きていることにとてつもない感謝を感じたのだ。
この体験は生涯忘れないと思う。

そして、WSQのライブを世界中追いかけまわしたい、なんてふうに思っていた。

演奏は進む。
聴いたことのある曲の断片がそこかしこに散りばめられているが、果たしてその曲なのかどうかわからないほどデフォルメされていたりもする。
全体で一個。

時折見せる茶目っ気のあるしぐさ以外はほとんどのエンターテインメント性もなく、そしてついぞ一言も喋ることもなく、ライブは突然終わりを迎えた。

4人が席を立ち、肩を組んで立っている。
「これから挨拶して、いよいよクライマックスか?」と思ったが違った。
ライブが終わったのだ。
信じられなかった。おそらく、そう思った人がたくさんいたに違いない。
僕たちはあまりにもあっという間に1時間半を過ごしてしまったのだ。

「ちょっと待ってくれよ」と言わんばかりのアンコールの嵐。
戻ってきた4人は、もう一度突っ走り、その演奏を最後に舞台袖に消えた。

スタンディングオベーション。
僕は生涯初めてのスタンディングオベーションをした。
周りもみんな立っていた。
本当に素晴らしかった。
終わらないでほしかった。
ずっと演奏していてほしかった。

一つ思った。
とても80歳には見えないのだ。
きっと、ずっと長生きするだろう。
そしてずっと進化し続けるだろう。

僕も進化する。
WSQを世界中追いかけまわせるように進化する。
だから、ウェイン、長生きしてください。

僕は、生きてて良かったって、本当に心から思ったんだから。

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