例えばこんな状況があります。
営業をしている人で、
「先輩は相手のふところに潜り込むのがうまい。だけど僕はそれができない」
と言っている。
同行して、その先輩のことを観察しているのだけど、
どうやってふところに潜り込んでいるのかがわからない。
そんなことを言っているとします。
その人は、
「先輩がふところに潜り込む様子」
をなんどもたくさん観察しているのに、
なぜか自分に再現することができない。
これはなんでなのでしょうか?
理由はもしかしたら、
「ふところに潜り込む方法を知りたい」
という視点でその先輩を見ているからなのかもしれません。
話をわかりやすくするために、
ボクシングにしてみましょう。
僕はボクシングは素人なので、
ここから書くことは全くの適当です。
なので、意図を汲んでもらえたらと思います。
あるボクサーは、
相手のふところに潜り込むのがとてもうまい。
そして、それを真似したいボクサーは、
その人が相手の懐に潜り込む様子を何度も見ているのに、
自分がそれを再現できないことで悩んでいます。
あるコーチが、彼にこう言いました。
「もぐりこむっていうのは、つまりどういうことですか?」
「より具体的にすると、どういうことになりますか?」
「彼は何をしているのでしょう?」
と。
すると、いろんなことがわかってきました。
まず、相手の動きをよく見て、相手が左パンチを出そうとして左ひじを上げた時が、ふところに潜り込むチャンスだということ。
そして、そう判断した瞬間に、右足を斜め前に踏み込んで、重心を移し、右ひざを曲げながら頭を右下に下げ、
右腕をたたみながら肘をわき腹に寄せるようにして、拳を少しねじるようにする。
そこから、相手の左脇腹の空間に、体と拳を入れていく。
こんなことを見て取ることができました。
どうでしょう?
圧倒的に再現性が高くなりませんか?
つまり、
ふところに潜り込むのがうまい人は、
ふところに潜り込んでいるわけではないのです。
見て憧れている人が勝手に、
「あの人はふところに潜り込むのがうまい」
と思い込んでいるだけなのかもしれません。