以前コーチングセッションの中で、
こんなことをしたことがあります。
何をしたのかというと、
セッション中におもむろに財布から30万円を取り出して、
無言でクライアントさんに渡しました。
クライアントさんは非常に困惑した表情をしていました。
そこで、聞いてみました。
「今、どんな気分ですか?」
するとクライアントさんはこう答えました。
「え?これ、どういうことですか?今すごく困ってます。すごく、気持ち悪いです」
なので、僕は言いました。
「そうですよね。気持ち悪いですよね。でも、なんで気持ち悪いんだと思います?」
するとクライアントさん、ちょっと怒りながら、
「そんなの気持ち悪いに決まってるじゃないですか。おもむろにこんな大金を渡されて。どういうつもりなんですか?」
それからのやりとりです。
僕「そうなんですか?お金を受け取ると気持ち悪いんですか?」
クライアントさん「だって、お給料でも報酬でもなんでもないのにこんな大金気持ち悪いです」
僕「そうですか。つまり、お給料とか報酬だったら気持ち悪くないんですね?」
クライアントさん「そりゃあ、まあ。でもこれは違います」
僕「そうですね。これは違いますね。違うとなんで気持ち悪いんでしょう?」
クライアントさん「そう言われてみると、なんでか、わからないです」
僕「そうですか。わからないですか」
クライアントさん「確かに、お金をもらうからって、気持ち悪がる必要はないですよね。これ、もらっていいんですか?」
僕「ダメです。返してください(笑)」
と、こんなやりとりがありました。
さて、このクライアントさんはなぜ、こんなに気持ち悪かったのでしょう?
あなたも、何の理由もなくいきなり30万円を受け取ったら、気持ち悪くないですか?
僕だったら、気持ち悪いです。
「収入は、自分が世の中に与えた価値の対価」
という言葉があります。
つまり、お金というのは価値の量を示す数字でしかないのです。
例えば宝くじで1億当たったら、嬉しいでしょうね。
僕だったらすごく嬉しいです。
では、その翌日に、日本国内で円が一切使えない事態になったらどうでしょう?
それでも昨日当たった1億円を喜べますか?
喜べないですよね。
依然として同じ札束が目の前にあるのに、
前提が崩れることによって、一瞬にしてただの重たい紙くずになりました。
つまり、お金というのは価値の量を示す数字が書いてある紙(媒体)でしかないのです。
そして、社会では金銭的価値というのは交換されることを前提として作られている定義です。
だから、ただ価値を数字として理由もなく受け取るだけだと「気持ち悪い」という気持ちが生まれます。
自分は何も価値を提供していないからです。
「お金がない」
という言い訳を使う人がいます。
本当にお金がない場合もありますが、
実際にはそうではない場合が多いです。
「あなたが提示している価値と、自分が持っているお金を交換するくらいなら、自分はもっと自分にとって優先順位の高いものと価値を交換する」
というのが、「お金がない」という言葉の意味です。
大体の場合、お金はないわけではないのです。
それを「お金がない」というメッセージにします。
すると相手には、
「あの人は自分の提案に価値がないと感じている。あの人は自分の提案と価値の交換をするつもりがない」
と感じさせるメッセージとして伝わってしまいます。
それを続けていれば、
結果、価値を交換する相手がいなくなり、実際にその人はお金がなくなり貧乏になるでしょう。
生きていくためにどうしても使わなければならないお金があるのは事実で、
それに対してのみお金を使うことしかできなくなってしまい、他の価値を得られなくなるからです。
豊かさを失った時、それが貧乏です。
未だに、本当にまれになのですが、
「コーチングを値引きしてほしい」とか「コーチングを無料でやってほしい」というオファーがあります。
今は完全に断っていますが、以前は受けていたこともありました。
実際やってみるとわかるのですが、
無料でやるコーチングは、効果がほとんどでません。
なぜなら、
コーチングは「クライアントさんが、自分で目標を達成したりそのスピードを最短最速にできるようなクライアントさん自身の最高の状態を引き出し、クライアントさんの自責において行動を変容させていく手法」です。
ところが無料や値引きされた価格でやりたい、というのは、
「お金は払いたくないけど、本当に効果があるなら考えてもいい。まず効果があるか試したい」というメッセージです。
つまり、それは自責ではなく他責です。
形のないものを売っている僕たちコーチだからこそ、そこは妥協してはいけないし、
クライアントさんに自分で結果を出してもらうことが仕事だからこそ、
「クライアントさんを貧乏にするオファー」は受けてはいけないのです。