困った話があります。
ある主婦の方が、
「私、旦那を愛せないんです」
とおっしゃるんです。
で、
「なんで愛さないんですか?」
ときくと、
「だって、愛せないんですもの。私の周りにも、旦那を愛せなくなったっていう人、いっぱいいますよ?」
とおっしゃいます。
だから、僕はもう一回聞いたんです。
「なんで、愛さないんですか?」
すると
「だから、愛せないんです」
とちょっとキレ気味に言われたので、
少し言葉を加えながらもう一回聞きました。
「なんで愛せないかじゃなくて、なんで愛さないのかをきいてるんですが?」
すると、
ポカーンとされていました。
これ、実はなんかの本にも載っているやりとりです。
まさか僕にも同じ質問をする方が現れるとは思いませんでした。
本当にこういう相談ってくるんだーって、ちょっと笑いそうになるのをこらえながら、
真摯に対応しておりました。
その方「だって、愛せないという状態では、愛することはできないんじゃないですか?」
僕「そうなんですか?つまり、食べられないという状態では食べられないということですか?」
その方「ん?まあ、そんな感じ、というか、同じ意味じゃないですか?」
僕「はい、そうですね、同じ意味だと思います」
その方「じゃあ、やっぱり愛せないじゃないですか」
僕「じゃあ、食べ物にたとえてみましょう。◯◯さんは、りんごが食べられない状態なので、りんごを食べられません、と言っています。でも、生まれつき食べられないんじゃなくて、過去は食べられたのに、今は食べられなくなった、と言っています。ここまであってますか?」
その方「なんでりんごになるのかはわかりませんが、だいたいあってると思います」
僕「まあまあ。すると、可能性は2つです。りんごが腐ったか、りんごを食べられない体質になったか」
その方「もう一つあると思います。りんごを嫌いになった、という場合です。
僕「その場合は食べられないではなくて、食べたくない、ですね。食べられないわけではないですから」
その方「まあ、そうですね」
僕「りんごの例えは乱暴かもしれませんが、◯◯さんの場合はどうでしょう?だんなさんが腐ったんですか?それともだんなさんを食べられなくなったのですか?」
その方「だんなが、腐ったのかなー」
僕「そうですか、だんなさんはそんなに変わってしまいましたか?」
その方「変わったような、変わっていないような」
僕「きらいになっちゃいました?」
その方「きらいとまではいいませんが」
僕「もしりんごが腐っていると、食べたら体に悪いです。だんなさんが腐っていたら、愛したら体に悪いかもしれないんですけど、どうでしょう?」
その方「意味がわかりません」
僕「だんなさんを愛すると、何か不都合があるんですか?」
その方「最初に戻っている気がします」
僕「とおっしゃいますと?」
その方「私は、だんなを愛せなくなった、と相談しに来ているのに、愛したら不都合があるのか、なんて質問は前提がおかしいんじゃないんですか?」
僕「そうでしょうか?だんなさんを愛せなくなった、とご相談をしにきたということは、本当はだんなさんを愛したいと思っている、というご相談だと思っていましたが、違いますか?」
その方「そりゃ、そうなったら、楽しそうだな、とは思いますが」
僕「僕はずっとそういう相談だと思っていました。りんごは、食べて毒になるくらい腐っていたら食べてはいけないと思いますが、そうでなければ(そうであってもですけど)食べるか食べないかを自分で選べます。◯◯さんはだんなさんを愛しても不都合はないのであれば、だんなさんを愛するか愛さないかを決めるのは◯◯さんなんですが、どうしますか?」
その方「・・・。」
僕「何がきっかけかはわかりませんが、◯◯さんはだんなさんを愛せないんじゃなくて、愛さないという行動を選択しているだけのように思います。何か気に入らないことがあったりとかして、あーじゃなかったらこーじゃなかったらって色んな不満と向き合っているうちに、愛するのをやめたんじゃないでしょうか?」
その方「そうかもしれません」
僕「残念ながら人を変えることはできないんですよ。僕たちコーチですら、それはできません。というか、人は変えられないと伝えるのもコーチの大事な仕事かもしれません。僕にはもちろん、◯◯さんにもだんなさんを変えることは難しいでしょう。でも、自分を変えることはできます。愛せないんじゃなくて、愛さないを選んでいるだけなのです。であれば、◯◯さんの悩みを解決する方法は、もう一度『愛する』を選ぶことなんですが、どうでしょう?」
その方「おっしゃっていることはなんとなくわかりました。確かに私が愛することをやめていたように思います。でも、どうやって愛したらいいんでしょう?」
僕「それは僕にもわかりません。過去、愛していらっしゃった時、どうやって愛していらっしゃったんですか?」
その方「それは、まあ、ちょっと恥ずかしくて言いにくいですけど、でも、大事にしてました」
僕「そうですか。では、またそれをされたらいいんじゃないですか?」
その方「やってみます」
と。こんな会話がありました。
今は仲良くやってるみたいですよ。