今この「あいうエッセイ」は2周目である。
1周目の「ほ」の時は、当然「本厚木」について書いたであろうと思っていた。
ところが、なんと1周目は「ほっぺの話」を書いていた。
信じられない。
我が故郷、本厚木を差し置いて、ほっぺの話を書くだなんて。
よっぽどうちの息子のほっぺが魅力的だったのだ。
まあ、最初の「あ」の話で「厚木」の話を書いてるから、
本厚木についてなんて、もう書き尽くしてるということなのだろうが。
そもそもこの「本厚木」というのは駅の名前なのだが、
色々とトラブルが起きる原因となっている。
前提を共有しておくが、
本厚木というのは小田急線の駅の名前で、
その隣の駅は厚木駅である。
そして、僕たち厚木市民は「駅」と言ったら本厚木駅を指す。
ところがそのことを知らない人に「厚木の駅に集合ね」というと、
結構高い確率で「厚木駅」に行ってしまう。
そりゃそうである。
本厚木駅と厚木駅があって、
厚木の駅と言われたら「厚木駅」の方に行くのが自然である。
しかもどちらも小田急線の駅だが、
厚木駅はJRとの乗り換えがある。
本厚木駅は小田急線しかない。
あまりJR相模線を経由して来る人もいないかもしれないが、
それでも知らない人からしたら「厚木の駅で」と言われたら、
厚木駅に行ってしまうのは厚木市民でもうなずける。
そもそもである。
厚木駅は厚木市にはない。
これがおかしいのだ。
大元をたどると、本厚木駅も厚木駅も駅名変更後の名称である。
本厚木駅は「相模厚木駅」
厚木駅は「河原口駅」
という名前だった。
厚木駅はどこにあるのか。
海老名市河原口である。
厚木市ではないのだ。
千葉県にある東京ディズニーランドみたいなものだ。
もっと言えば「厚木基地」なるものは厚木市内には存在しない。
こんな調子だから、
本当の厚木の駅として本厚木駅と呼ばれる変わりに、
地元民からは厚木駅は「ウソ厚木」なんていう不名誉な名前で呼ばれてしまっている。
乗り換えがある割には、
厚木駅は小さく本厚木駅は割と大きい、というのも特徴的だ。
いつ頃のデータかは知らないが、
本厚木駅は乗り換えがない駅での一日の乗降者数が日本一であったこともあるらしい。
今はどうか知らないが、
ゆずが流行ったことはストリートミュージシャンがあふれる駅の一つでもあった。
「かぼす」だの「すだち」だのがいた。
僕が子どもの頃の、一番古い記憶の本厚木駅は、
まだハサミで切符を切っていた。
千葉に住んでいたおじいちゃんとおばあちゃんが、
遠路はるばるやってくるのを、改札口で待つ僕。
僕の後ろには、天津甘栗を売っている屋台があった。
おじいちゃんとおばあちゃんがやってきて、
僕に天津甘栗を買ってくれる。
家にたどり着き、栗が食べたいが、僕はむけないのだ。
おばあちゃんがその栗をむいてくれる。
むいてくれたそばから僕はそれをひょいと手に取りパクッと食べる。
僕だけが栗を食べ、おばあちゃんは食べない。
本厚木駅にまつわる一番古い思い出はそんな感じだ。
二番目に古い思い出は多分中学生の頃だろう。
本厚木駅南口に本屋さんがあった。
今は確かドラッグストアだ。
そこの1階の旅行関連の本の売り場で、
僕はよく立ち読みをしていた。
当時は特に旅行が好きというわけではなかったのだが、
その本棚の奥が2階に上がる階段で、、、
上を向いて歩こう。