【の】濃厚の話

我ながら濃厚に生きていると思う。

 

つけ麺を食べにいけば、濃厚なスープを薄めることなく全部飲み干してしまうし、

アルコール度数が40度を超えるようなお酒でも、濃厚なままストレートで飲むのが好きだ。

 

もちろん、味わいやアルコール度数だけではない。

なんというか、生き方そのものが濃厚なのだ。

 

と言っても、

何か人に褒められるような、貢献性というか、

尊敬の対象になるような濃厚さでは全然ないように思う。

 

そういう濃厚さというよりは、

何人分かの人生を生きているかのような、

そういうカオスな雑多さというか、

そんな濃厚さなのだ。

 

ある時、

愛川町の山奥にある仏果堂という骨董カフェの囲炉裏端でコーヒーを飲んでいた時のこと。

あれは確か、28歳くらいの頃だったかと思う。

 

チャーリー坂本さんというシンガーソングライターの方と一緒にコーヒーを飲んでいたのだが、

その坂本さんから不意に、

「たいちくん。たいちくんって、早く死にそうだ。」

と言われた。

 

「え?なんでですか?」

と聞いたら、

「生き方が濃厚すぎて、あまりにも生き急いでいるから。そんなに急いでたくさん経験してると、早く死んでしまいそう。」

というようなことを言われたのだ。

 

その時はどういうことなのかよくわからなかった。

 

僕は、没頭するものについてはとにかく没頭しまくるし、

そうでないものについては早々に見切りをつけるタイプだ。

 

また、人間関係も粗雑に扱ってきたし、

ちょっと人には言えないようなあれやこれやといった経験も、確かに人よりは色々あるかもしれない。

 

そういうことを色々と総合して、

生き急いでいる、と言われたのかもしれない。

 

そういうものを濃厚さと呼ぶのだろうか、

と書きながらちょっと疑問にも思っている。

 

ただいつも思うのは、

毎日日々が過ぎるのがあまりにあっという間なのだ。

それは時を短く感じさせているのだと思うのだが、

その割に最近のことを思い返してみても、

それが遠い過去のように感じられるのだ。

 

例えば、今週日曜日は名古屋で勉強会を開催した。

翌日月曜日に沖縄に飛んで、

火曜日に車でブセナテラスに移動。

今が木曜日で、ブセナテラス3泊目なのだが、

ちょっと前だったはずの名古屋の勉強会が、

もうすでに遠い昔のことに感じられるのだ。

 

来週末は札幌に飛ぶのだが、

その頃には沖縄の思い出は半年くらい前のことのように感じられるんだろうし、

その前の名古屋なんて一年前のように感じるんだろう。

 

この時間の感覚はなんなんだろうか、

といつも思うのだが、

これこそが僕が濃厚な人生を生きてきている証拠なんじゃないか、

なんて思うのだ。

 

とかっこよさげに書きながら、

僕の左脳が「ちょっと待てちょっと待て」と言っている。

 

今過ごしている時間があっという間なのも、

近い過去のことを遠く感じてしまうのも、

単純に記憶力が低下してきているだけなのではないか、

と、大声で警鐘を鳴らしているのだ。

 

それでも僕の右脳は、

「うるさいうるさい。濃厚なんだ。それでいいじゃないか。おいしいじゃないか。」

と、のたまっている。

 

僕は右利きです。

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