【や】やばいやつの話

本当にあったやばいやつのやばい話をしようと思う。

 

そいつは元バンド仲間だ。

ある日突然、久しぶりにLINEが来た。

 

というか、

LINEの通話の通知が来た。

 

僕は電話が大嫌いなので、

LINEの通話は着信しないようになっていて、

通知だけがくるようになっている。

 

なんどか着信があったようなので、

何事かと思ってLINEで返信。

 

すると、

「どうしてもお願いしたいことがある。一生のお願い」

 

一生のお願い、である。

 

この一生のお願い、

大人が使う場合にはたいていロクな話ではない。

 

まあでも、

昔のバンド仲間のよしみだ。

頼まれてあげられるお願いなら、頼まれてあげよう。

しかも一生のお願いだと言うのだから。

 

そう思い、LINEを返信。

 

するとこんな返事。

 

「どうしても30万円貸して欲しい。その日のうちに返すから」

 

なんだそりゃ。

 

全くどういうことかわからないので詳しく聞くと、

 

・賃貸物件を借りたい

・契約をするのに信用情報として銀行の口座残高のコピーが必要

・その残高が指定された金額より30万円足りない

・通帳に30万円を入れてコンビニでコピーしたらすぐに返せる

 

とのことなのだ。

 

なんか、なんというか、

微妙に怪しい話だ。

 

微妙に怪しい話なのだが、

器用に嘘をついたりできるタイプじゃないことも知ってる。

 

ただ、

100%手放しでOKと言える感じもしない。

 

なので、

「うちまで取りに来るならいいよ」

と答えた。

 

顔を見て貸せば、

よっぽどじゃない限り裏切らないだろうと、

そう踏んだのだ。

 

すると、

「わかった、いく」

と。

 

翌日、

午前中に来ると言っていたのだが、

諸々書類を揃えるのに時間がかかり、13時ごろになるという連絡。

 

13時にぼくんちの中にあるコンビニで合流。

封筒に入れた30万円を渡す。

 

「ありがとう!すぐに返すから!」

と言いながら、

「これ、預ける」

と。

 

なんか、

メリケンサックのような謎のアクセサリー。

 

「なにこれ?」

と聞くと、

「これ、15万円するから、預ける」

と。

 

(えー、いらねー。だいたい30万円貸すのにそれより安いものを担保に置いていかれてもー)

と思いつつ、とりあえず受け取る。

 

そんなことがあったのがその日の午前中。

 

30分後には返してくれる、

という話だったのだ。

 

だが、

話はそうスムーズには進まない。

 

まず、

「方向音痴で銀行まで迷ったからまだ時間がかかる」

という連絡が14時50分ごろ。

(いやそれにしたって時間かかりすぎだろ)

と思いつつ、こっちはもうお金を貸しちゃってるので待つしかない。

 

またしばらくして連絡が来て、

「一つの口座に30万円を入金し、ネット上で履歴をとったけど、もう一つの銀行の通帳のコピーが必要かもしれないから、もう少し待ってほしい」

 

なんだそれ、きなくさいな、大丈夫か、

と思いつつ、こちらはわかったと返事するのみ。

 

するとしばらくして、

「一度一つ目の銀行にお金を入れて、それをもう一つの銀行に振り込み直したんだけど、15時過ぎちゃってたから着金が翌日になって、引き出しもできなくなった」

と。

 

うんうん、まあそうだよね、銀行って15時までだからね。

と思いつつ、

まじで大丈夫なのか、きな臭すぎるぞ、

とも思っている。

 

どうするのか聞くと、

「とりあえず自分の持ち金を持ってそっちにいく」

と、

 

 

でも全然大した金額を持っているわけでもなく、

それを預かったところでこちらにはなんの効力もないし、

ただただ時間の無駄になると判断し、それは辞退。

 

「そういうのはいいから、明日の朝になったらすぐに通帳のコピー取って、お金おろして、ちゃんと返してね」

と伝えると、わかった、と。

 

銀行の営業は9時からだそうなので、

「明日の9時になったらすぐに通帳コピーしてお金おろして返しにいく」

と。

 

ということでこの時点で約束。

・9時に銀行に行った時点で一度連絡をする

・通帳のコピーが終わったらもう一度連絡する

・10時30分に必ず返しに来る

この3点を合意した。

 

そして翌日。

 

9時に連絡を待っていると、

連絡が来ない。

 

9時半になっても10時になっても来ない。

 

「え、まさかばっくれ?」

 

今まで割と大きなお金を人に貸して、とばれた経験が何度かあるので、

「えーまたかよー」

とか考えていた。

 

10時30分、うちに現金を持ってくる約束の時間。

 

にも関わらず、連絡がつかない。

既読すらつかない。

 

おいおい、まじでばっくれじゃないか。

 

と思っていたら、11時前になってようやくLINE。

 

「ごめん、寝坊した」

と。

 

もうさ、緊張感ゼロなわけですよ。

この状態で寝坊できるの本当にすごいと思う。

やばい。

 

結局その後、昼すぎにお金を持ってきてくれました。

 

器用に嘘つくタイプじゃないのはわかってても、

ちょっとドキドキハラハラしました。

 

そして、その2週間後。

 

「そういや、あいつ家借りれたのかな」

 

自分とは関係のないことだか、

こんな感じで関わってしまうと、

顛末が気になる。

 

というか、

顛末の連絡をしてこいよ、

くらいに思っていた。

 

「いえ、借りれたの?」

とLINEすると、

「店舗物件だったんだけど、結局審査で落ちた」

と。

 

おいおい待て待て。

 

家って言ったじゃないか。

 

事業用物件だったらまた話が全然別だろうに。

 

しかも、

借りられなかったんかーい。

 

やばいやつはとことんやばい、というお話でした。

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