【と】友だちじゃないです、の話

僕が所属するZIZO倶楽部(じぞーくらぶ)という卓球のチームには、実に愉快な仲間たちがたくさん存在する。

 

朗らかサイコパスと呼ばれる人や、

奥さんに隠れて試合に出るためにユニフォームをメンバーに洗濯させる人、

大阪に単身赴任になった途端に羽を伸ばして毎日3時間卓球するようになった人、

などなど。

 

みんな大事な仲間であり、友だち、だと僕は思っていた。

 

そう、あの日までは。

 

チームメンバーのA君とB君とCさんと僕とで一緒に飲んでいた時のこと。

あれは確か試合のあとの打ち上げか何かだったと思う。

 

ちなみに、AくんとBくんは僕より6歳ほど年下。

Cさんは10歳ほど年上である。

 

その飲みの席で、Aくんが唐突にこんなことを言い出したのだ。

 

「実は、結婚式をやるんですよ」

 

と。

 

そう、その数ヶ月前に彼はめでたく入籍をしたところだったのだ。

 

ところが水臭いAくんは、その入籍の話もチームメンバーには伏せていた。

僕やBくんやCさんは事前に聞いてはいたのだが。

 

こっそりと入籍し、今度はこっそりと結婚式をしようというのである。

 

AくんとBくんは古くからの友だちなので、Bくんが結婚式に呼ばれているのは必然。

 

僕は思ったのです。

 

「これは、僕もお祝いしたいぞ!」

と。

 

Aくんとは、一緒に東京選手権の出場を目指してサシで練習をしたことも何度もある間柄。

一時期は僕のことを「師匠」とまで呼んでいた。

むろんこれはただ単に6歳くらい年上で、少し僕の方が卓球が強いってだけで、

僕は自分を師匠だなんて思っていなかったけど。

 

そんな、切磋琢磨しあった間柄なのだ。

友人の一人としてこれはぜひともお祝いしたい、と思って当然だろう。

 

だから、言ったんです。

 

「そうなの!それはおめでとう!ぜひ呼んでよ!」

 

と。

 

するとAくんはそんな僕の反応が意外だったようで、

「え!中野さん来てくれるんですか?」

と。

 

だから僕は言ったんですよ。

「当たり前じゃないか!友だちだろ!」

と。

 

するとAくん何を思ったのか、

「いや、友だちではないです」

と。

 

わかってる。わかってるよ。

ちょっと年が離れてるからね。

自分から友だちだとは言いづらい。それはわかる。

 

でも僕は聞きたくなっちゃったので、聞いたんです。

「おいおい、友だちじゃなかったらなんなんだよ」

と。

 

すると横でニヤニヤ聞いていたBくんがすかさず、

「知り合い?」

と。

 

「ちょっと待ってくれよ!!!」

で、Cさん含め4人とも大爆笑。

 

もちろん、無事に結婚式、披露宴共にご招待いただき、出席したわけですが。

 

そりゃーもうね、かわいい友だちというか、後輩というか、仲間というか、チームメイトというか、知り合いというか、

そんなやつの結婚式ですからね。

感動しましたよ。

 

無事挙式が終わり、次に事件が起きたのは披露宴の始まる前のことでした。

 

挙式が終わり、披露宴会場の準備が整うまで、僕たち参列者は会場の前でフリードリンクなどをいただきながら待っていたわけです。

当然ながら披露宴の席次表もそこで配られていて。

 

BくんとCさんと僕は同じテーブルだったのですが、、、

 

Bくん 新郎友人

Cさん 新郎友人

中野 新郎”知り合い”♡

 

こらこらこらこら(笑)

 

おそらく、日本ひろしと言えども披露宴の席次表に「知り合い」と書かれたのは僕が最初で最後なのではないでしょうか。

 

しかも、披露宴が始まってから、司会の方から、

「新郎たってのご希望で、中野さんから後ほどスピーチを賜りたいと」

 

おい!知り合いにスピーチ頼むやつがどこにいるんだよ、と(笑)

 

まあ、頼まれたからにはAくんに恥をかかせるわけにはいかないし、

新婦さんにも安心してほしい。

 

そんな気持ちで、スピーチはなんとかなったようです。

 

なったようです、というのは、僕自身もあんまりよく覚えていないからです。

まあお酒好きな僕ですから。

 

ただ、内容は本当によかったらしいです。

動画が残っていないのが残念。

 

Aくん、末長くお幸せに。

知り合いより。

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