「み」ってことで今回も頃合いの良いネタが思いつかず、
コミュニティーの皆さんにお題を求めたところいろいろでてきまして。
面白いもので、自分自身が特に何もアイディアを持っていなくても、
お題をいただけると話せることっていうのがちょこちょこと思い出されてくるんですね。
まず、「み」ってことで、僕港区在住なんですよね。
それをすっかり忘れていたわけですが。
僕の家は、JRだと最寄駅が田町なんです。
意外と知られていないのですが、
田町、という住所は存在しません。
ではなぜ田町なのか。
それは二週目の「た」に譲るとして。
そんな田町駅での出来事を思い出したのです。
僕が田町駅の近くに姿を表すときというのは、
たいてい酔っ払ってます。
というのも、田町駅に行く用事なんていうのは、
・移動
・飲みに行く
・移動のついでに飲みに行く
の3つくらいなので、
ということは、3分の2の確率で酔っ払っているわけです。
ある冬の日。
僕は平常運転で酔っ払っていました。
ちょっと酔いを覚ましたくて、駅から続くデッキの上で、
駅から出てくる人並みをなんとなく眺めていたんです。
すると、
20代くらいの男性が、道ゆく人にとにかく声をかけまくっているんです。
それも、ぱっと見でサラリーマン風の見た目をしている人に見境なく。
断られても断られてもとにかく声をかけ、
たまに会話になり、名刺を渡し、何かを記入させ、別れ、
また声をかけまくる。
断られても断られても、見境なく。
すごいなー。
ナンパすらしたことがない僕からしたら、
あんな芸当ができる人というのは本当に尊敬に値します。
そんな様子をぼーっとずーっと眺めてたんです。
すると、その彼が僕の方に歩いてくる。
え、僕?
いや、これは間違いなく僕だ。
目があってる。
どんどん近づいてくる。
怒ってるのかな。
いや、そうでもない。
たぶん。
でも、笑ってもいない。
どんどん近づいてくる。
街中で見知らぬ人に見境なく話しかけられる大化け物が、
ゆっくりとこちらに向かってくる。
逃げるか。
いや、それも変だ。
などと考えているうちに、目の前まで来てしまった。
「こんばんはー」
と、優しい声で。
次の瞬間、
冷たい空気を切り裂く鮮やかな右ストレート。
が、飛んでくることもなく、
「何されてるんですか?」
と。
この人は一体何をしているんだろうなー、って見知らぬ人を凝視していた僕に近づいてきて、
「何されてるんですか?」
と。
面白いじゃないか。
そう思った僕は、正直に心の内を話しました。
「いや、ジロジロ見ててすみません。一体何をしてるんだろうな、と思って、思わずずっと観察してしまっていました」
と。
すると彼はこう答えました。
「実は、サラリーマンの方を対象にアンケートを取ってたんです」
「ほー、なるほどね。それは大変な仕事ですね」
「そうなんですよ、なかなかいきなり話しかけてアンケートに答えてくれる方なんていませんからね」
「そりゃそうですよね。びっくりしちゃいますもんね」
「ところで、お兄さん(僕)はサラリーマンですか?」
「あー、サラリーマンではなくて、しがない零細企業の社長をしています」
「なるほどー」
「あれ、ダメでした?」
「はい」
え!?ダメなの!?社長ダメ!?アンケートすら答えさせてもらえないの???
きっと、彼には僕のそんな困惑した表情が見て取れたのだと思います。
「あーー、いやいやすみません。サラリーマンの方だけが対象なので」
「あ、そういうことなんですね。ちなみにそのアンケートをとってどうするんですか?」
「うーん、まあ社長なんで教えますが、収入とか住環境に関するアンケートなんです」
「うんうん、なるほど」
「それでお名前や電話番号も書いていただくんですよね」
「ほー、それでどうするんですか?」
「後日改めて電話をさせていただいて、そこから投資用物件の営業をするんです」
「ほーーー、なるほど!あー、だから社長はNGなんですね!」
「そうなんです(笑)」
と。
社長NGっていうのは、
僕を含め世間一般にいる普通の社長というのは、
金融的な信用力ってあんまりないので、ローン審査が厳しいんですよね。
サラリーマンの方がよっぽど信用力があるんです。
また、投資用物件まで持つ余裕がある社長さんのところには、
社長さん繋がりでそういう話がいくようにできてるので、
基本的に一般的な営業って相手にされにくいんですよね。
まあ、
彼はそんなふうにして、見知らぬサラリーマンに見境なく話しかけ、
住環境や年収、家族構成や入社歴、電話番号や名前といった個人情報まで言葉巧みに聞き出し、
後日電話をしてアポをとり、投資用物件を販売するという、
すごいお仕事をしていたわけです。
ナンパもしたことない僕からすると、
ほんとうにすごい仕事だな、と思います。
えげつないコミュニケーション能力と胆力。
僕だって、酔っ払ってたからこんなに話せたんですよ。
シラフだったら無視して逃げます。
ということで、港区で見境なく声をかけ見知らぬ人に商品を売る話、でした。