【に】まできた。
子どもの頃辞書を開くと、ナ行の言葉って妙に少なかったように思う。
辞書を開かずに横から見ると、ア行カ行サ行という感じで「ここからここまでがア行」と分かるようなマークがされていたと思う。
それをみた時に、ナ行というのはなんというか、非常に心もとない。
僕は中野というのに、なんでナ行の言葉ってこんなに少ないんだ、と、
なんだかちょっと寂しい思いになった記憶がある。
そこにきての「に」だ。
もう、にから始まる言葉でエッセイを書けるような言葉がなかなか思いつかない。
何かないものかと思いだしていたところ浮かび上がってきたのが「煮物」という言葉。
僕の子どもの頃の好物と言ったら、
母が作ってくれる豚の角煮だった。
これが家で食べる一番好きな食べ物だったと思う。
大人になってから外食に行って、豚の角煮を見つけると注文するのだけど、
これがなんか違う。
何が違うのかわからないけど、とにかく違う。
だから、
うちの奥さんがはじめて豚の角煮を作ってくれた時に、
かなり母の味に近かったことにとても驚いたし、嬉しかった。
今でも正月なんかに実家に帰ると、
だいたい母が豚の角煮を作っておいてくれる。
これがうまいんですよ。
あと煮物と言えば、やはり母が作ってくれた肉じゃが。
これは僕もお気に入りだったけど、なぜか父方の祖母もお気に入りで。
「たいちのお母さんはお料理がじょうずでいいねぇ。特に肉じゃがはなんであんなに美味しいんだろうねぇ」
なんてことをよく言っていた。
なんで美味しいのかはわからないけど、
何か作り方に秘密があるのかもしれない。
めんつゆを入れてたとかなんとか。違うかもしれないけど。
肉じゃがっていうのはおつまみにもなるし、
ごはんのおかずにもなるしで万能選手ですね。
おつまみで言えば、
飲み屋のメニューにあると大体頼んでしまうのが、もつ煮込み。
味噌の味がガッツリ効いたやつが好きで、
これがあるとビールがスイスイ進んじゃうんですよね。
まあ、なくてもスイスイ進んじゃうんですけどね。
うちの近くにある飲み屋さんはもつ煮込みが二種類あって、
赤と白なのですが、赤の方が辛いんですよね。
これは特にビールに合う。
白の方がほとんど辛くなくて、こっちはご飯のおかずにも最高。
そうだ。
以前から不思議に思っていたことがあって、
お肉って煮込むと柔らかくなるじゃないですか。
でも、普通お肉って熱を加えると硬くなっていきますよね。
ステーキなんか焼き過ぎればどんどん硬くなる。
多分、お肉を煮込む時も、最初は硬くなっていくんだと思うのですが、
でも、それを長時間煮込むと今度は柔らかくなりますよね?
あれってどういう仕組みなんですかね。
すごく不思議だなって思ってたことを今思い出しました。
あと、豚の角煮、肉じゃが、もつ煮込みって、
もうこれ「肉」の話でも良かったじゃんって、
今気づきました。