サーブの話をしよう。
サーブは、本来はサービスと言われる。
それは、卓球のラリーが始まる一球目だ。
それを返球することをレシーブと呼ぶ。
本当はサービスと呼ばなくてはいけないし、
「サービスですよ」などと訂正されることもあるのだが、
サーブで呼び慣れてしまってるので、修正がめんどくさい。
なので、サーブで通そうと思う。
他のスポーツでももちろんそうだと思うが、
卓球においてはサーブが非常に重要で、大きな力を持つ。
これは、
卓球が他の競技と比べて「回転」が重要なファクターを持つからである。
ラケット競技で、
真正面に向かってボールを打っているのに、
真下にボールが落ちたり、真横に飛んで行ったりするような競技は、
他にはないだろうと思う。
なぜそんなことが起きるのかというと、
卓球ではピンポン球に大量の回転をかけるからだ。
回転がかかったボールはたくさん変化するだけでなく、
たとえばバックスピンがかかったボールは真正面から打とうとすると、
その回転の影響を受けてボールが下方向に落ちてしまう。
カーブがかかったボールを真正面から打つと、
前にボールを飛ばそうとしているはずなのに、
横に飛んでいってしまう。
卓球というのは、
そのラリー中にそういった「相手にスムーズに返球させないための回転」を、
常にかけ続ける競技だ。
これが、卓球をやっていない人には分かりづらいので、
「なんであんな遅いボールなのに打てないんだ」
「卓球選手は運動神経が悪いのか」
なんて思われてしまうこともあるのである。
実際には、3メートルもない卓球台の向こう側からボールが来るまでの間に、
その回転を極力正確に読み切って、それに対応する形で返球をしつつ、
さらに相手がスムーズに返球できないような打球をする必要がある。
実は、かなり繊細で、瞬時の判断を求められるスポーツなのだ。
そして、ここまでで分かる通り、
卓球というのは相手がかけてきた回転を読み切って、
それに対応しながら自分も回転をかける、ということをしていく必要があるのだが、
唯一それをせずに好き勝手なことができるタイミングがある。
それがサーブだ。
サーブは、自分で好きなように回転をかけることができるし、
相手の影響が全くない状態で、好きなところから好きなように出すことができる。
(もちろんルールはある)
これは相手にとっても強烈なプレッシャーになる。
だから卓球では、サービスエースと言って、
サーブだけで得点をしてしまう場面も少なくない。
(これについてはサーブエースとは言わない)
僕も人からは、
「中野さんはサーブが得意」と言われるし、
サーブで得点を重ねられる試合は確かに楽に進められる。
ただ、このサーブというのが非常にやっかいで、
相手にとって返球が難しくなるような回転がたくさんかかったサーブを出した場合、
相手がそれをなんとか返球してきた時に、
自分がかけた大量の回転の影響を受けたボールが返ってくるので、
今度はこちらが打ちづらくなってしまったりするのだ。
そういう時は、今度はナックルサーブといって、回転がほとんどかかっていないサーブが有効になったりする。
世界卓球などをテレビで見ていて、
相手がゆっくりそろっと出したサーブに対して、
普通に触れば返球できそうなのに、
レシーブが不思議な形でオーバーミスする場面を見たことがあると思う。
おそらく、
「なんか、プロ選手もそういうくだらないミスをするのかな」
なんて思われるかもしれない。
だが、そういう時は何が起きているのかというと、
強力なバックスピンがかかったサーブと見せかけて、
回転がほとんどかかっていないナックルサーブが出されていることが多い。
レシーバーはバックスピンだと思っているので、
そのまま返球しようとすればボールは下に落ちてしまう。
だから持ち上げながらの打球になる。
だが、実際にはナックルサーブだから、
持ち上げた分でオーバーミスをしてしまう。
卓球というのは、そういうことが、
素人が客観的に見てもよく分からないところで起きているのだ。
ふむ。
どうだ。
すごいだろ。